日本経営品質賞とTMS

[WAYマネージメントの実践]

TOYOTA WAY(Lean Leadership)から学び

トップダウン(方針展開)とボトムアップ(職場活性化)の融合


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日本経営品質賞とTMS WAYマネージメントの実践

1.経営品質向上プログラムとは

卓越した経営(エクセレンス)を目指して、経営全体をどの業種、業態の組織にも共通する枠組み(フレームワーク)を用いて自らの経営の状態を尺度(ガイドライン)によって振り返ることを「セルフアセスメント」と捉えます。この「セルフアセスメント」という方法を用いて、経営を革新できる状態に組織の能力を高めていく一連のプログラムが「経営品質向上プログラム」です。

このプログラムは1996年に(財)社会経済生産性本部(現・日本生産性本部)が設立した会員組織である「経営品質協議会」が中心となって推進しています。

  1. どんな組織でもシステマティックに展開できる方法論として確立していること。

  2. 共通の枠組みを用いているので、業種や業態を超えて学習することができること。

  3. 時代の要請にあわせて共通の枠組みを含めた方法も変えていくこと。

セルフアセスメントとは

卓越した経営をめざして、経営全体をどの業種、業態の組織にも共通する枠組みを用いて、自らの経営の状態を尺度によって振り返ることを「セルフアセスメント」と捉えます。経営革新がどのくらい進捗しているのかを振り返り、自らの気づきと組織能力による段階的革新を目指しています。

「セルフアセスメント」とは、「評価」を意味する行為、つまり「自分たちの活動を自己評価し、改善・革新の課題を発見する」方法という意味と、もう一つ「継続的な経営革新を進めていく考え方とその活動プロセス」の2つの意味があります。顧客価値を生むプロセスに着目し、経営革新を進めることを通じて多くの気づきを得ることもアセスメントと考えています。

日本経営品質賞のアセスメント(評価)基準は、目指すべき方向、基本理念を構成する4つの要素、7つの重視する考え方をベースとして、組織プロフィールと8つのカテゴリーからなるフレームワーク、20のアセスメント項目から構成されています。

このガイドラインは、元々アメリカの品質管理の専門家フィリップ・クロスビーが、組織マネジメントが品質に重要な影響を持つと考え、品質の違いを生む5段階の組織状態として提唱した成熟度モデルが原型になっています。この成熟度モデルは、その後、カーネギーメロン大学のソフトウェア工学研究所のハンフリー教授らがソフトウェア組織の成熟度モデル(CMM)を開発し、組織のマネジメント能力を高めることで、ソフトウェアの品質も高まったことから、多くの民間ソフトウェア組織で導入されております。

WAYマネジメントとTMSの協調

激変する環境、グローバルでの事業展開下では、企業の「思い」にあたる「WAY」をいかに社員一人ひとりが理解・納得して、事業戦略を策定し、実践させることができるか、いわゆる「WAYマネジメント」の実践が成功の条件ともいえます。

現地現物でのカイゼン・サイクルを自律的に廻せるチーム(組織)・人の育成が継続力を育みます。

.Toyota Way

企業としての進むべき方向やビジョンをどれだけ明確にし、顧客重視、品質重視の姿勢を打ち出しているかを重要視する日本経営品質賞ですが、生産や営業といった直接部門ばかりではありません。本社のスタッフ部門等も一丸となってお客様を想い、品質を向上させて、ご満足を頂く。そのために不断の改善活動をやらされ感無く(自律的に)全社で展開できる価値観(思想)がTOYOTA Wayの基本です。

TOYOTA Wayには、戦後まもなく(昭和20年)からの現場での改善活動の知恵が凝縮されて形式知化されています。TMS(Total Management System)という形で、この形式知を集大成されました。基本は職場(現場)の活性化と自律化です。現場が活性化されかつ自律化できてはじめて、トップのビジョンが実現され、その価値観が一瞬の幻ではなく『○○-Way』という形で永続します。

TMSは、この職場の活性化と自律化(社員の育成)の方法論(道標)を提供します。

トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷

TPSの始まり、、

1945年(昭和20年)8月に終戦を迎えました。その同年に当時の豊田喜一郎社長は、大野耐一氏に『3年でアメリカを追い越せ』と伝えました。当時の日米の生産性の差はほぼ1対10でしたので、3年で生産性を10倍にすると言う事になります。当時の日本の状況は、終戦から戦後の経済復興にこれからという時点です。

日米での産業競争力(生産性)の大きな違いを見せつけられ、アメリカの大量生産方式を真似る事が主流でした。この様な状況下でトヨタは、ひとり他とは違うアプローチを開始しました。10倍の生産性と言う事は、今100人で作業をする製造ラインがあれば、それを10人でできる様にすることです。と言う事で大野氏は、工員の多行程持ちと言う一人の工員が製造機械を2台、4台と扱える範囲を広げる多能工化の育成が始まりました。

その結果2年後の昭和22年には、トヨタでは、すでに2台持ち、4台持ちの工程(工員)が育成されました。その後色々な試行を経て、TPS(トヨタ生産方式)の基本が確立しました。TPSの三本柱である、『自働化』、『ジャスト・イン・タイム』、『ムダ取り』を大野氏やTPSを推進するスタッフ管理者が指導をしながら特定の製造現場(モデル工程)で実施され改善活動が推進されましたが、この活動の管理と言うか推進は、トップダウンでのアプローチ(統制型マネージメント)でした。

このような状態で、次第に現場では『やらされ感』が蔓延し、現場でのモラールやモチベーションが低下して、工場全体が荒廃して改善活動自体が組織内に広がりませんでした。このような状態の反省(振り返り)から、トータルTPSと言う考え方が生まれて来ました。

.トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷

トータルTPSとは、、

従来のTPSが特定の製造現場(モデル工程)であった対象を工場全体に広げようとした考えです。従来のTPSの対象と異なり、工場全体となるとそこには、製造ラインの部門(直接部門)の他に、工場設備の保全や、事務所(購買、計画、管理部門)で働く人たちも含まれます。このような間接部門の人たちをも対象となったとこで、トータルTPSではTPSの三本柱から7つの重要な施策が掲げられました。基本の三本柱も次のように変化しました。

また「従来のTPSではだめだ」と大野副社長やTPSを指導していたスタッフ自らやり方に対して反対する活動が生まれ、指導すると言うトップダウンのアプローチから自主研究(改善)自ら問題を発見し、自ら改善をする』活動に変革されました。トップダウンでの強制的改善から全員参加の民主的な改善活動に生まれ変わったのです。そのためには、働く人たちが、モチベーションを高め、自らマネージメントを行うと言う『人と職場の活性化』が重要な施策となりました。TPSは『人づくり』と言われる所以です。

.トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷

TMS((TOYOTA&)Total Management System)

トータルTPSは、工場全体いわば、生産に関係する部門でしたが、企業全体にこの考え方を広めようとすると、問題が起こりました。生産に関係する部門では、結果が直ぐに解る(見える)仕事ですから、人々の遣り甲斐や達成感も早く確認できますが、会社全体となると生産とは異なり営業や本社事務部門では直ぐに結果を見る事が困難です。また仕事の品質などと言われてもどの様に品質を測るのか?見えない事が沢山あります。

更にトータルTPSで解説されてる用語も製造に掛かる用語ですから、その用語の意味するところを製造とまったく関わりを持たない事務部門の人達に理解して貰う事は不可能です。そこでトータルTPSで使用している用語も事務部門(ホワイトカラー)の人達にわかる用語に置き換えてトータルTPSの原理、原則を理解して貰う事が求められました。TMSはこの様な観点で再構成されたトータルTPSです。またTMSでは、トータルTPSの重要な施策の中の『人と職場の活性化』に焦点をあてた活動が主体となります。

.トヨタでのTOYOTA Way確立までの思想の変遷

「トヨタ基本理念」を実現するために、社員として共有すべき価値観と行動指針を明示した「トヨタウェイ 2001」を策定しました。グローバルトヨタの発展と現地への権限委譲をスムーズに進めていくために、これまで暗黙知に伝承されてきたトヨタの経営哲学、価値観、実務遂行上の手法を明文化したもの。トヨタ従業員の行動原則といえるものです。

職場が活性化されているとは、

活性化された職場・チームとは、どんなチームか?

方針展開に沿い、組織の目標を効果的(効率的)に達成する為にチームが協調して自律的に、問題・課題を認識し、自らその解決を図りながら、永続的に成長する事で、仕事を通して「やり甲斐」、「達成感」を味わい、顧客を含めたその関係者間に、感謝・感激・感動の気持ちが芽生える。

その経営的メリットは、何か?

持続可能(ワークライフバランスの取れる)なカイゼン活動を通した永続的な企業の成長の仕組みが構築でき、自律した社員・チームでの人財力による環境適応性の向上と企業競争力の向上が期待できます。その経営成果としては、『強力な差別化による安定した利益』です。

職場が活性化されていると言う定義は?

モラール、モチベーション、カイゼン目線(現状否定)、目標の共有、作業の標準化、見える化、施策・手段の共有、自発的な言動、One for All, All for Oneの意識(言動)、プロセス重視、品質に対する拘り、お客様に対する想い、自分達の強み・弱みを認識できる。

上記の様な事柄が振り返りの中で議論され、その結果がビジュアル・ボードに表現されているか?

10参考資料 TOYOTA Wayの誕生と発展

昭和20年(1945) 終戦

故豊田喜一郎社長が「3年でアメリカに追いつけ」と号令

生産性を10倍にする事(100人で行う仕事を10人で実施)

ジャスト・イン・タイムの発想

昭和22年(1947)

機械の二台持ち、四台持ちへの挑戦(多能工化への挑戦)

昭和31年(1956)

故大野耐一副社長アメリカ視察 (スーパーマーケット視察)

お客は、必要な時に店に行き、必要なものを、必要なだけ買える仕組み

昭和48年(1973)

オイル・ショック トヨタ生産方式(TPS)が注目を浴びる

昭和57年(1982)

コンビニのPOSシステム稼動(マーチャンダイジング連動)

JITの発想=サプライ・チェーン

昭和58年(1983)

トヨタ生産方式(TPS)の英訳本発刊

昭和60年(1985)

E.M.ゴールドラット博士が制約理論(TOC)を発表 『ザ・ゴール』発刊

平準化(流れを作る)⇒スループットの思想

昭和61年(1986)

野中郁次郎、竹内弘高共著のThe New New Product Development Gameが HBRに掲載

昭和61年(1986)

ケン・シュウェイバーがScrumを提唱

昭和63年(1988)

ハンコ三つ運動⇒権限委譲

平成元年(1989)

文鎮型組織⇒組織のフラット化

平成5年(1993)

業務改善活動⇒BPR

平成8年(1996)

ケント・ベックがXPを発表 アジャイル開発が話題になる

平成13年(2001)

TOYOTA Wayとしてまとまる 同年、アジャイル・マニュフェスト発表

11育成のステップの紹介

TMSコアの位置付け、意味付け

組織の目標を達成する為に、その構成員として基本的に身に着けるべき考え方と行動様式を会得する指標としてTMSコアの6つのステップが有効(単に理論ではなく、実績&経験からの方法論です。)

自律型チーム・ビルディング

改善の8つのステップを順番に実施する事で、自律したチーム、社員の育成が図れます。

基本は、現地・現物の職場巡回にあります。経営者、管理者の皆様には、自室に部下を呼び寄せての業務報告の替りに積極的に現場(職場)を訪問して、職場活性化の評価項目を自分の目で、肌で雰囲気を掴んでください。きっと自室で業務報告を聞くこととは異なった現場の真の様子を把握できます。塾の指導員が24週間に渡って、毎週訪問して指導いたします。

最初の12週間で、人・チームの自律したチーム・ビルディングを目指します。次の12週l」間で、経営目標と連動するチーム・ビルディング(組織間連携など)を目指します。

リーダー育成の重要性

指示・命令から能力を生かす。育てる。褒めるリーダーへの変革。

基本は24週(回)のカイゼン塾

【TMSの基礎知識と振り返り】

TMSの基礎知識の確認と振り返りの有効性と必然性を確認します。

【目で見る管理の考え方】

チームマネジメントとメンバー教育に有効な「目で見る管理」の考え方を学びます。

【目で見る管理と作業分析】

「目で見る管理」における目的・目標がチームで合意されているか確認し、仕事の構成、仕事の内容を分析する必然性を理解します。

【タスクボードの設計】

仕事を分析し顧客への価値の提供ができている時間の実態を認識します。

【タスクボードの作成】

ビジュアルボードとタスクボードを作成し、自律的なマネジメントが出来るために、自分たちのマネジメントを形式知化します。

【中間発表会】

これまで(上記)の成果を現地現物で確認します。

次の12週の内容

【目標の再設定】

組織の目的・目標を達成するため、目的、目標の見直し再設定を行います。

【ビジュアルボードの再作成+価値の創造】

自分達の目的・目標に対してより高い価値を提供するために仕事のやり方を変える。

【自工程完結】

自らの仕事の善し悪しが直ぐに解り、直ぐにカイゼンできるため、物事が良い方向に動き職場が活性化するという考え方を実践します。

【ムダと2S活動】

自分達の目的・目標に対して、より効果的に仕事を行うためにムダと2S(整理・整頓)をビジュアルボードに取り込みます。

【利益の創造】

自分達の目的・目標に対して、より利益を向上させるための考え方をビジュアルボードに反映させます。

【成果発表会】

6ヶ月間の活動内容を発表します。

カイゼン塾の姿

カイゼン熟の姿

IT,DX時代、カイゼン塾での最終成果は、システム化、プログラム化できる知的財産であることが望ましい。現場の暗黙知式を明示化、知識化し、適切で正確なIPOプロセスを確立し、それを手順化することです。

これが実現できれば、日常的な改善業務推進で知的財産は必然的に充実し、また社内等で伝承が容易になります。知的財産化に投入した時間と投資の回収は、社員教育利用やシステム開発の生産性、品質の向上で回収は容易でしょう。

学習成果を構成する各要素と成果

学習成果を構成する各要素と成果

日常的な改善活動にしろ、プロジェクトタイプ的な集中学習にしろ、学習した結果は誰もが理解できる普遍的、科学的な要素で構成されることが大切です。それによって社内の知的財産として活用促進することができます。

問題のある対象の変化を論理的、科学的に把握するために、対象範囲をモデル化(1)し、モデルの変化に必要な科学知識(2)と対象の付帯情報(3)を使って、問題が発生する変化を正確に再現できるようIPOメカニズム化(4)します。このメカニズム上の問題発生の欠点、制御判断ミス等を修正し、問題が発生しないようプログラム化(5)、あるいは手順書を作成します。

これらの知的財産化を習慣づけることができれば、誰に対しても、今、何が問題か、何処をどの様に修正、改善すべきか、どのような改善活動を実行中か、どれだけ成果が実現できているかなどを正確、短時間に説明することができるでしょう。

売上・利益最大化の役割分担

売上・利益最大化の役割分担

売上・利益の最大化はΣ{V(付加価値)xN(販売数)}で実現します。V、Nの値、最適値は、製品・サービス毎に異なるので、各製品・サービスのライフサイクルを考慮した計算が必要になります。

N最大化は、サプライチェーンを担当する製造現場の主たる役割、V最大化はバリューチェーンを担当する製品開発の主たる役割です。そして、N最大化にもV最大化にも必要なのは、それを実現するために社内に蓄積した、あるいは社員が持つ知識です。このV、N最大化に貢献する知的財産の準備、社員教育は経営の主たる役割です。

もちろん、製造現場や製品開発現場で今必要な知識はそれぞれ独自に獲得しますので、経営が準備すべき知識は将来必要になる知識です。それを的確に準備することで、コアテクノロジーとコアプロセスを常に競争優位に維持し、継続的な売上・利益最大化を実現し、企業存続、雇用維持を確実にします。

IT、DX時代、社員教育の成果を迅速、的確に実現する為にも、改めて企業内での役割分担を明確にすることが必要です。